歌舞伎座

先だって「風の谷のナウシカ」が歌舞伎になるというチラシを見まして。
同僚と新作歌舞伎についてひとしきり盛り上がったのが一ヶ月ほど前でしょうか。
しばらく忘れていたのですが、先週、同僚が出勤するや「三谷歌舞伎!観た方がいい!」と開口一番に。
新作歌舞伎というキーワードが耳に残っていて、調べたら歌舞伎座の6月本公演で新作がかかっている。
チケット、もう取れないだろうなぁと思ったら残席がある。
「チケット取れたら絶対行く価値あるよ!」
と、言うので、その場でチェック。
明後日なら席があるんだけれど、夜とは言え16:30からだから、会社を休まなければ。
ボスが隣にいたので、「金曜日なら席があるんですけどねぇ」と促したところ「行った方がいいよ!休みなさいよ!」との嬉しいお言葉。
良い職場です。
ありがたくお休みをいただき、雨の中歌舞伎座へ行くことと相成りました。

しばらく足が遠のいていた歌舞伎座にくるきっかけが新作歌舞伎とは。
なにやらワクワクします。
歌舞伎のチケット高いですもんね。
実は、観たいお芝居のチケットが立て続けに取れなくて、その分のお金が回せたのも何かの縁なのかもしれません。
リニューアル後の歌舞伎座はこれで2回目。
東銀座の改札を抜けると、もう、歌舞伎見物のウキウキムードが広がっています。

もう、看板から普通じゃない。
入場して、座席に荷物を置いて、久しぶりなので会場の見物に。
歌舞伎座名物、焼きたて人形焼きとか、たい焼きとか、嬉しいですよね。
大抵の会場は座席での飲食が禁止されてるんですが、休憩時間に座って食べられる場所の確保も難しいし。
その点、歌舞伎座や寄席は良いなぁと思います。
だって、30分の休憩で食べられるスペースを探して、食べて、トイレに寄って、って、至難の業じゃありませんか?
2階のお土産スペースもチェックして戻ってくると、ふとイヤホンガイドの案内が。
私は文楽でも歌舞伎でも、通常、イヤホンガイドは使わない派です。
見たままの印象を大切にしたいので。
ただ、今回は借りることにしました。
だって、開演前と休憩時間に三谷幸喜さんと八嶋智人さんの対談が放送されるっていうのですもの。
思わす声を出して笑ってしまった対談、すこし抜粋しますね。

・歌舞伎のタイトルは漢字で奇数だから、「決闘高田馬場」の時は「!」で数字を合わせた。
・幸四郎は本当に息子を愛してる。気持ち悪いくらい見てる。
・歌舞伎役者はアドリブが好きで上手。
猿之助さんはゲネプロもふざけていたが、ちゃんとするとスゴイ。
・監督的にはダメ出しに「そっちね」と言われると腹が立つが、愛之助さんは「なるほど」と返してくれる。
・歌舞伎は感情が高まると音が止まるという決まり事があるわけだけど、これを当てはめて作り上げていくのが面白い。
・歌舞伎自体には馬だの狐だの様々な動物が出てくるが、この動物をコレだけ出演させるのは初だろう。
・唯一、歌舞伎役者以外の出演者の八嶋さん、掛け声かけられるとしたら「トリビア!」だな。

他にも、ネタばれありつつ、大変楽しい対談でした。

さて、いよいよ始まります。
とは言え。
本当は細かい演出の一つ一つを語りたいところですが、いかんせん、ネタバレばかりになってしまうので、全体の感想だけ。
これはやはり演劇です。もちろん、歌舞伎も演劇ですが。
現代的な芝居に歌舞伎の決まり事というスパイスを使うことで劇的な効果が生まれる、と言う感じ。
本来なら、外してしまうかもしれないクサい仕草や台詞回しも、むしろ効果的に感じるし、音に関する決まり事も、なるほどと唸ってしまう。
第二幕はロードムービーである、と対談で言っていたのですが、これを義太夫節に語らせるのは、ドンピシャでした。
ただ、通常の語りではないし太夫さんは苦労されたことでしょう。恐らく監督からは「もっと面白く」という指示も出されたであろうし。
黒子ならぬ、白子が出て舞台転換していくのも、歌舞伎という前提があってのことで違和感もなく。
大量の「某・動物」が出演するシーンは本当に圧巻で、なおかつナンセンスで、素晴らしかった。
ダメ押しの最期の演出では、もはや観客どころか案内係の皆さんも楽しそうで嬉しくなりました。
そして、何より、スタンディングオベーション。繰り返されるカーテンコール。
海外の歌舞伎公演で見ることはありますが、歌舞伎座でのソレは初体験。
本当に、衝撃尽くしの観劇でした。

最初から最後まで、一瞬たりと心を捉えて離すことのない、素晴らしい舞台です。
まだチケットが取れる日もある様子ですので、ご興味がある方には是非にもオススメです。

追伸
筋書(パンフレット)も、ここまで読み込んだことはかつてなかったです。
終演後に立ち寄ったバーで、ジンソーダの氷がすっかり溶けてしまうほど読みふけりました。