国立小劇場

文楽を観てきました。2月の文楽は入場が三部に分かれているのですが、私が観たのは第二部「大経師昔暦(だいきょうじむかしごよみ)」。
第一部と第三部の「桂川連理柵(かつらがわれんりのしがらみ)」と「檀浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)」は知っている演目だったのですが、この第二部は初めてです。

※予告映像があるのを今知りました
これが、色々凄かった。
この演目は姦通物。
いわゆる不倫なのですが、自ら望んで関係を持ったわけではなく、お互い相手を間違えてイタしてしまった、という。
ん?何言ってるかわからない?
ですよね。

あらすじはこんな感じなのです。

…登場人物…
以春(経師屋の主人)
おさん(以春の女房)
玉(下女)
茂兵衛(手代)
助右衛門(重手代)
梅龍(講談師で玉の小父)
道順(おさんの父)

以春の店は朝廷御用達の表具師でお上から暦の発行を許された特権的な商家。
以春は女房の目の届かないところで玉をモノにしようとしていますが、玉に撥ね付けられます。
おさんは道順の借金を以春に知られないように工面したいと、茂兵衛にこっそりと頼みこみます。
それを受けた茂兵衛が主人・以春の印鑑を捺したたところを助右衛門に見つかってしまいます。
おさんの頼みをかたくなに守り、口を割らない茂兵衛。
そこで、かねてより茂兵衛に想いを寄せていた玉はこれを庇おうと嘘をつきます。
以春は「玉は茂兵衛とデキているから自分を受け入れないのだ」と、茂兵衛を隣の空き家の2階に監禁してしまいました。
その夜、茂兵衛を庇ってくれた礼を言うためにおさんが玉の寝床を訪れます。
そこで、玉の茂兵衛への想いと以春が毎晩忍び込んでくるという話を聞き、寝床を入れ替わって自分が以春を懲らしめてやることにしました。
一方、監禁されている茂兵衛はいままで玉の再三のアプローチを無下にしてきたけれど、今回の恩にこたえて想いを遂げさせてやろうと2階から忍んでいくことに。
おさんは以春が忍んで来ると思っている。茂兵衛はそこには玉がいると思っている。
灯りは一切なく、真っ暗な中、お互い相手を間違えて事が起こってしまった。
そこに帰宅する以春、行燈に灯が入り部屋に伸びてきた光でお互いの顔を見合わせ呆然とする二人。
その気はなかったとしても、実際には姦通してしまっているので二人は逃げ出します。
玉は仲立ちをしたと咎められ、小父の梅龍の元に預けられることに。
おさん茂兵衛は玉を心配して梅龍の家に行きますが、「主のために潔く死ね」と言わているのを窓外で聞き、涙します。
そこにおさんの両親が現れ、嘆き悲しみ、今生の別れとなります。
二人は奥丹波に隠れ住みますが、とうとう役人に見つかってしまいました。
そこに梅龍、「二人は悪くない、悪いのは珠なので首を討った」と玉の首を掲げたところ、役人が惜しんで「唯一の証人がいなくては、もう二人の無実を証明することが出来なくなってしまった」と二人を引き立てていく。

 

前々から文楽って赤裸々な性表現するよなぁ、と思っていたのですが、今回は扱っているのが姦通なので特に生々しかった。
幕が上がって早々の義太夫が「あんな男持たうより牛に突かれたがまし」だの雌猫を抱きながら「隣の紅粉屋の赤猫は~こいつが男にしてやりたい」だの。
おさんが見えなくなったとたん玉に言い寄る以春なんぞはガッツリ玉の胸に手を突っ込むし。
姦通のシーンも身体を重ね、ギリギリのところで枕屏風を立て回すんだもの、ハラハラしちゃいましたよ。
日本人はそういうのを隠す文化って言われてるけれど、本当にそうなのかしら。

さて。
やっぱり現代の感覚では「それってどうなのよ」と思ってしまい、ついツッコミを入れてしまう。
きっと詳しい人に話を聞いたら解消するんでしょうね。

その1
茂兵衛、玉ちゃんへの恩返しに身体を与えてやろうって発想は何様なのか。

その2
おさん、以春を懲らしめるなら手を掛けられたときに「あんたの女房だ」と言えばいいのに。

その3
道順、目茶苦茶おさんを責めるけど、そもそも貴方が二重借りとかしなければこんなことにはならなかったわけで。

その4
おーい、梅龍!玉の首討っちゃうとか短絡的過ぎ!

それから、今回の演目で印象的だったのが、最初に出て来る猫ちゃん。
キツネやらはよく出ますけど、猫ちゃんて他の演目でもあるのかしら。
ものすごく可愛いし、仕草が本物の猫のようでした。
そして、梅龍宅で両親と別れるシーン。
物干しの柱とおさん茂兵衛の作る影が磔のように、窓から乗り出す玉の影が獄門首のように浮かび上がるんです。
素敵な演出に感心しきりでした。

悪人というほどではないかもしれないけれど、玉に言い寄った以春やおさんに横恋慕していた助右衛門はのうのうと生きていく。
理不尽過ぎてモヤモヤするんですが、これがまた文楽の魅力でもあるんでしょうか。
基本的に軍記物が好きなのですが、こういう演目も面白いですねぇ。

特にこの作品は、大きな演目に挟まってのツウが観たいと思う意欲作なのかもしれないな。

プログラムに挟んである床本を読みなおしています。

そして、「近松物語」として大映映画になっているようなので、こちらを今度鑑賞してみようと思っています。

 

せっかくなので、国立小劇場のご案内。
正面の売店ではプログラムやグッズなどが販売されています。脇の売店ではサンドイッチやお弁当、飲み物などが販売されています。もちろん、お弁当を持ち込んでもOKです。
お席での飲食はできませんが、長い休憩時間に中のソファーや外のベンチなどでお召し上がりを。2F・3Fの食事処で軽食も取れますし、こちらにはフリーのお席もありますので、持ち込みのお弁当などはこちらを利用しても。
しかし、今回はイヤホンガイド借りれば良かったわ。